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投稿者:
遠山金三郎 @ tpro2.tky.threewebnet.or.jp on 97/7/06 23:13:04
第11回
サターン町奉行遠山左右衛門之丞様ご出座!
金「さてこれより、猟奇殺人の一件につき吟味いたす。皆のもの面をあげぃ。」
慎重者・田鳥(以下田)「御奉行様、例の下手人の姿が何処にも見えませぬが、いったいどうしたことでございますか?」
金「当奉行所は、少年法の精神に則って運営しておる。pupilのお白洲は非公開。よって本日の下手人は、お主のみじゃ。」
田「そんな殺生な。他にも不届き者はいっぱいいるではありませんか。」
金「例えば実況中継に群がる不謹慎な野次馬阿呆どもか。奴らはお白洲にあげるのさへ汚らわしい。
さて、当奉行所の調べによれば、お主らが雑誌にpupilの人相書きを載せたこと既に明白な事実。これが法を破る行為になっていること、知らなかったでは済まされぬぞ。」
田「確かに知ってはおりました。(胸を張って)しかし当編集部では、世間をこれだけ騒がせた事件、少年法の範囲を超えるものと判断し、人相書きの公開に踏み切ったのでございます。」
金「...」
田「(調子に乗って)お陰様で売り切れ続出の大反響。私どもはいつも読者が何を求めているか、そのニーズに答えることをモットーとしております。さらに今回の事件でいえば、少年法などという悪法により適正に裁かれぬとは誠に遺憾。せめて社会的に制裁を加えようという意図もありまする。そう、われわれは正義を貫く雑誌でございます。」
金「(急に口調が変わる)てめえ言いてえことはそれだけか。」
田「はっ?」
金「言いてえことはそれだけかって訊いてんだよ!このスットコドッコイがぁ。黙って聞いてりゃ調子にのりやがって!何ぃ、少年法の範囲を超えるものと判断しただとぉ、法の判断は奉行所がやることでぃ!それに正義を貫く雑誌だとぉ、日頃ストーカーまがいの追っかけを行い、やらせ記事をでっち上げる、お前らがそんな台詞を吐くたぁ、ちゃんちゃらおかしいわ!!たとえお天道様が許しても、この土星が許せねんだよ(といって入れ墨を見せる)。」
田「どっつしぇーーーーー...(絶句)。」
金「と、いつもならこうするところだが、脅しだけでは裁きに値せぬ。これ、参考人をここへ。」
一同「はっ!」
田「参考人?」
参考人A、B、C登場
金「その者たち、名はよいから、言いたいことだけを申せ。」
田「(参考人Aを見て)やや、お前はpupilではないか!!」
参考人A「おそれながら御奉行様に申し上げます。私は何という不幸か、この人相書きにそっくりであったために、近所の者から犯人の親戚だと疑いをかけられ、石を投げられる始末でございます。もはやまともに人として暮らしができません。」
参考人B「御奉行様ぁ、私の家の電話番号が、どういういきさつかネット上で犯人のうちの番号として載せられております。おそらく名字が同じというだけのことで間違われたものでしょうが、それ以来いやがらせや脅迫の電話が鳴りっぱなしで、もう家族の者みなノイローゼになっております。私どもが一体何をしたというのでございましょう、このような理不尽な仕打ちがございましょうか(涙)。」
参考人C「申し上げます。うちの息子はどうやら犯人と同い年のようです。住所も同じ○が丘で家も近いのらしいですが、何年かしてうちの息子があの事件の犯人だったと疑いをかけられやしないかと思うと、心配で夜も眠れません。これもみな不確かな情報が不十分に雑誌等で流されているからでございます。」
金「うむ、よくわかった。どうじゃ田鳥、お主の言う正義と言うやつは、このように罪もない人たちを、不幸のどん底に陥れることなのか?」
田「そ、そ、そんなはずでは、け、決してございません...。」
金「言い訳は無用じゃ。もう一度、この者たちをしかと見よ!」
田「...、...。(目は涙で滲んでいる)。」
金「(台座を下りて)よいか、儂はのうお主らの報道の自由は尊重しておる。ネットでの発言も同じじゃ。しかし、自由ということと無法状態とは、決して違うのじゃ。皆が共通のルールやモラルを守っている以上、自由は保証される。しかし、そのルールやモラルを破ると言う自由は保証されてはおらぬのじゃ。」
田「わ、私が悪うございました。御奉行様、何なりとお裁きを。どんな裁きでも受けまする。」
金「そうか殊勝であるのう。では裁きを申し渡す。本来であれば遠島申しつけるところではあるが、改心したその姿に免じて罪二等を減じ、1年間の発禁処分とする。」
田「た、たったそれだけのことでお許し給おうとは...。ああ、ありがたや。御奉行様、ご恩は一生忘れません。」
一同「やっぱり、御奉行様だ!遠山様は違うぜえ。」
金「これにて一件落着!」
(注)この作品はフィクションであり。登場する個人・団体名は、実在のものとは何ら関係ありません。
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