[ このメッセージへの返事 ]
[ 返事を書く ]
[ home.html ]
投稿者:
山崎 きょう @ osk3100.bekkoame.or.jp on 97/7/15 02:37:08
In Reply to: (2)エヴァにみる現代人の”病”
posted by 黒い板 @ 203.180.223.71 on 97/7/11 21:15:10
> この作品から読み取れる現代の”病”とは?
>
> また、それを促進させてしまったことを詫びている富野氏の想いとは?
エヴァの病理
それは補完計画の行き着くところが、人間の不安や苦痛を超越的力によって取り除いてほしいという思想である。
ズバリ結論から言うと、人類補完計画とは「人類が一つになる」ことである。
まずなぜ人類が一つになる必要があるのか?人間には、個々の個体差があり(個性)、また個々に独立した存在である。そのため個体間には、意見の違い、感情の違いなどが存在し、これらがストレスや不安といったものの原因になる。個体間の食い違いが大きくなれば、決別につながり、さらに心理的不安定感を助長する。このようにして、人間は個々に独立しているが故に、互いを傷つけ傷つけられる。では、どうすれば傷つけ傷つけられることを回避できるのか?これには二つの方法があ
る。一つが引きこもりに見られるように外界との接触を一切遮断してしまう方法で、もう一方が、幼児的退行や転写などに見られるように、相手に同化し融合してしまうことである。しかしこの方法はどちらも不可能である。人間が社会的動物である以上、社会構造を一切無視して生存することは不可能に近い。隔絶した山の中で一人で暮らすならそれも可能かもし
れないが、そうすると今度は孤独感に支配されて苦しむことになるだろうし、生活すること自体が非常に困難で大変なものとなる。また、個々に独立した存在である人間を一つに融合してしまうことは、物理的に不可能である。つまり、傷つけ傷つけられるということは人間にとって不可避なことである。だからこそ、加持が言うようにおもしろいのであり、現在まで成長と発展を続けてこられたのである。
これを解決する、つまりは心の隙間を埋めるために庵野が採った方法が、全人類を融合してしまうことだ。26話の最後でシンジは「僕はここにいてもいいんだ!!」と叫ぶが、これは取りも直
さず「人類が一つの世界」にいてもいいという意味であり、自分自身の自我形成に成功したためでも何でもない。
個々人の個性を統合し人類を永遠不変のものとする、これはつまり自己の崩壊であり、それは個体の死である。独立した個体が無くなり、不安も孤独もなく、すべてが一つの統合された世界、それはまさしくエデンの園−ユートピア−である。そして、それは死そのものでもあるわけだ。
補完計画には重要な点が二つある。一つは、人類が一つになる=ユートピア=死という思想であり、もう一つが自助努力無しに第三者にその実行を委ねる形を取っていることである。
しかしさらに問題なことは、エヴァが大ヒットしてしまったことなのである。この病的な内容が、多くの人々に受け入れられたということが、現代社会の病巣を浮き彫りにしている。
エヴァンゲリオンのストーリーの中に自分が入り込むことによって、シンジと共にアイデンティティーを確立することを望み、25・26話の演出上の難解さはあったものの、多くの人々が受け入れてしまった。最終話を自己啓発セミナーと呼び、自己のアイデンティティ統合をエヴァンゲリオンによって行う。エヴァンゲリオンの世界の中では、他人に干渉されることもなく葛藤も不安も存在せず、視聴者はエヴァンゲリオンの世界の中での自分を確立する。しかもそうすることによって確立されたアイデンティティは、見かけ上人類普遍の物で且つ、確立には全く自助努力を必要としない。
アイデンティティ確立に汲々とし、パーソナリティーの統合ができない現代人は、エヴァンゲリオンという救世主を待ち望み、エヴァの中で理想的境地に至ろうとしているのである。
以上がエヴァがとても危険で病的であると私が考えるゆえんである。
さらに詳しいことは下記のHPを参照して下さい。
http://village.infoweb.or.jp/~fwgj6159/
|