第14戦編

　あんな阿知花の顔など見たくない。
　と、思えるほど阿知花の顔は沈んでいた。
　それもそうだろう。いくらセッティングを変えようがマシンは阿知花の
思うように走ってくれないのだから。

　相変わらずTWRアロウズは混迷の一途を辿っていた。
　そんな予選２日目。阿知花が急に記者会見を開いた。そして、この一言。
「私、久遠寺　阿知花は今年度いっぱいでTWRアロウズとの契約を破棄いたします。
　来年度は別のチームで走ります」

白石　右京「・・・なぜ、アロウズを・・・」
久遠寺　阿知花「決まってるでしょ。あたしは勝てるドライバーだってことは皆さん
分かってますよね。現に勝ったんだし。でも、アロウズはその後、どうしようもない
チームになってしまった。テストも出来ないわ、マシンはボロボロだわ。
　こんなチームでこれ以上やってもどうしようもないわ。」
白「それじゃ、来年はどこで・・・」
久「まだ言えないわ。でも、勝てるチームと話をしてるの。
　　皆さんが予想もつかない所ともね。まあ、確率は低いけどね」
白「そうですか。来年度はもっどいいチームで活躍されることを期待します」
久「って、とりあえず来年より明日のレースで頑張るわ」

　このような状況で、いい成績など残せるだろうか。
　そして、来年はいないと分かっているドライバーにチームが全力を注いでくれるだろうか。
　そんなことはない。

　いつも以上にピリピリした空気の阿知花に近づく者はほとんどいなかった。
　某チームのれのん氏（和服姿の阿知花のファンらしい）が気づかずに近づいて、
ビンタを喰らったという話である。

そして、レースも予想通りだった。

　第一コーナーでチームメイトが車を後にし、阿知花も良いところ無く
９位という結果しか残せなかった。

　これ以上結果について話すのはやめよう。
　で、レースの結果以上に一つ残念な話がある。

　阿知花が今日は洋服だったのだ。

「だってさ、今は和服着る気分じゃないわよ。
　あんなんじゃ。今はもう何も話したくないわ。
　とりあえず、新しいチームが決まるまで、みんなの前で
　和服は着ないと思う。
　そういうこと、じゃね」

　と一方的にまくり立ててモーターホームの中へと去ってしまった。

　早く新しいチームに決まって、また阿知花の和服姿を見たいものである。
＃チームが決まることと阿知花の和服姿が見れないことのどっちが重要かは、秘密である。

　フリージャーナリスト　白石　右京
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ああ、調子悪い。

　久遠寺