そのとき、少年は翼を得た。(AZEL買います!)



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投稿者: SHR @ 133.95.80.175 on 98/1/08 15:50:53

In Reply to: AZELは欲しくなくても買うべし!!!

posted by 土星の民 @ proxy1.highway.ne.jp on 98/1/08 14:59:37

どのぐらい少年は彷徨ったのだろう。仲間を失い、強大な権力に追われ、悼む余裕すら
なくして少年は砂塵の中を逃亡し続けた。
やっとの思いで身を隠せるだけの岩影を見つけ、そこに潜んでどのくらい経ったのだろうか。
突然、物音と気配を感じ、少年は武器に手を伸ばした。
攻性生物か?
それを目にした少年は、わずかに安堵する。
まだかすかに濡れた羽膜、自重にすら震える頼りな気な手足。生まれて間もないのだろうか。
まだ危険ではない。…だが、いつかは成熟し、人を襲うのだろう。
少年は武器を向けた。その時代、その世界に生きる人全てがするように。
だが、撃てなかった。
…殺すのか?仲間がそうされたように。クレメンタイン達がそうしたように。
怯えと好奇心をたたえた瞳が少年を居抜く。
今なら容易く殺せる。危険の可能性を減らせる。
仲間達が殺されたのと、少年が追われるのと同じ理由で…命を奪う。
そう思ったとき、少年の目から涙が溢れた。失ったものを想い、少年は初めて慟哭した。

やがて、何かが身をすり寄せる感触に少年は面を上げた。
まるで慰めるかのように、慕うように、攻性生物が身を寄せていた。
かすかに、生きるための絆を感じる。それと共に、意志が…復讐と、追求の念が湧く。
生きよう。
少年は決意する。
自分のために…死んでいった皆のために、そしてこの有翼の雛のために。
そのとき、少年は翼を得た。


…構想10分、製作10分の超小作です。
あの砂色の世界に何が待っているのか、そして騎竜は何を追うのか。
アイン、ツヴァイで示された謎解きと共に、新しい世界を楽しみに待っています。
新しい名作になるといいですね。