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投稿者: 倭寇三勇士 @ tpro2.tky.threewebnet.or.jp on 97/9/07 23:03:55

In Reply to: 帰ってきたサターンの金さん 第21回

posted by 倭寇三勇士 @ tpro2.tky.threewebnet.or.jp on 97/9/07 23:02:07

「で、結局儂が出向くことになったのか?」
「仕方ありませぬ。外様とはいえ相手は五十万石の大大名でございますからな。」
「なんと横柄な。無理をしてまで出てもらわなくとも良かったのではないか?」
「最近やたらとかまびすしくなっております。ここらでひとつ決着をつけたほうがよろしいかと。それと御老中より、決して面倒を起こすでないというお達しがありました。」
「言ってること矛盾してないかあ?」



「サターン町奉行・遠山影基でござる。」
無頼庵・飯野(以下)「おおこれは遠山殿。お初にお目にかかる。」
「こちらこそ、お会いできて光栄でござる。」
「堅苦しい挨拶は抜きとしようではないか。今日は無礼講じゃ。」
「では遠慮なく。」
「話によれば、そなたはゲームにはちとうるさいらしいのう。」
「これは恐れ入りまする。いやなに昔とった杵柄でございますゆえに。」
「おおそうか、では俺の創ったゲームはいかがであるかな?」
「なかなか奇抜で、発想が豊かでございまするな。そもそもゲームとはいろんな可能性を秘めたものでございまする。○○のようにパクリのようなゲームをつくって、売れたからと言って大いばりをするような輩の気が知れませぬ。」
「おおそうかそうか、まったくもってその通りじゃ。お主とは気が合うのう。」
...
「ところでじゃ。昨年と違って今年はどうも収穫が悪い。これも全て中古米もとい中古ソフトが出回っておるからじゃ。」
「ん!?」
「中古ソフトの流通を黙認しておるからいかんじゃ。おい遠山!さっさと禁止のお触れを出せばよいではないか。となりのプレステ町ではとうの昔に出しておるというのに、何故出さんのじゃ。」
「おっしゃることがよくわかりませぬ。」
「なんじゃと!そんなこと子供でもわかるではないか。中古ソフトが出回るまで待ってから買おうと言う輩が多い。つまり少しでも安く買おうというわけじゃ。今の中古ソフト市場の規模を知っておるか。年間4,800万本じゃぞ。これは新品の市場の1/3に及んでおる。こんな状態である限りは、安心してソフトが出せるはずはなかろう。」
「...それこそ子供騙しの論理であろう。中古を禁止したからといって、新品の売上が1/3増えるわけでは無かろう。」
「なんじゃと。」
「そもそも中古で買うものが多いと言うことはな、お主らのつけた定価に満足をしない者が多いということじゃ。つまりそれだけの価値が認められんということじゃな。」
「俺のつくったソフトにケチをつける気か!」
「儂の中古ソフトに対する方針は首尾一貫しておる。決して良しとはしておらぬ、しかし禁止はせぬ。」
「必要悪とでもいうのか。」
「なぜ中古市場が必要とされているのか?それを見極め、代わりになるものを用意しない限り、禁止するのは危険じゃ。仮に中古流通を禁止したとしよう、今まで中古を利用していた者のうち、(多く見積もって)半分は諦めて新品を買うかも知れぬ。しかし、残り半分はきっと買わず仕舞いじゃろう。逆に今まで新品で買ってきたものの中に、中古で売れぬとあらば、買わぬと言う者も出て来るであろうな。その数を1/3程度としようか(ここで1/3としたのは中古市場の規模が、前述の通り新品の1/3であるため)。するとどうじゃ、(100*(2/3+1/3*1/2)=83.33)、結局は逆効果で売上は8割強に落ちてしまうだけじゃ。」
「戯言だ!そんな数字に根拠もなにもないではないか!」
「そうかも知れぬ。ただ一つ言えるのは中古市場というのは、新品市場と補完しあいながら共存共栄しているのじゃ。新品を買う→中古へ売る→またその金で新品を買う といった無限連鎖にある、中古流通を禁止すればこの連鎖は断ち切れ、新品市場も打撃を受けるであろう。」
「ええい。所詮はゲームの質もわからぬ連中ばかりじゃ。どうせここの連中はぎゃるげーしか興味が無いと見える!」
「お主が自分の創ったゲームに自信を持っているのはようわかる。しかし、売れなんだからといって、他人のせいにするのはよくないぞ。かつてプレステでやっていた頃は、初期出荷が少ないとか表現規制が多すぎると言って飛び出してきた。サターンに移ったら今度は、流通制度が良くないとかサターンはとどのつまりバーチャマシンでしかないとか言いだしおる。そうじゃいつもお主は何かに責任を転嫁することで気を紛らわせてだけじゃ。」
「この俺に説教する気か!?」
「売上本数が気になるのならてっとり早く売れセンのゲームを創れば良いではないか。しかし大衆に媚びを売るようなソフトを創るのは嫌いじゃろう。その姿勢は立派じゃと思う。ならばその道を突き進めばよいではないか。」
「ええい!ソフト創りの苦労もわからぬ者が大きな口を叩くではないわ!もう顔も見とうないわ!」
「残念でござる。お主にもうすこし人の話を聞く耳があれば、...。これにて御免仕る!」
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「フン...、あの若造が大きな口を叩きおって...。確かに奴の言うことに一理あるかもしれんのう。...、しかし俺は無頼庵だ、いまさら自分の生き様を曲げられんて...。」


遠山の妻・奈津(以下)「あら、あなた今日はずいぶんと早いお帰りですのね。」
「うむ、たまにはお前とさしつさされつで酌み交わそうかと思ってのう。」
「まあ嬉しい。でも明日は雪でも降るのかしら?」
...
「のう奈津...」
「なんですの貴方?」
「...、奉行職をお役御免になるかもしれん。」
「!...」
「どうした...、さすがに驚いたであろう。いつもの癖でな、つい怒らしてはならぬ人を怒らしてしまったのじゃ。見損なったか?」
「...いえ、でも貴方のそんな一本気なところが好きなのです。」
「(*。-_-。*)...よせよ、年甲斐もなく照れるだろうが。」

その後、無頼庵は、すぐにD2地雷(?)のサターン製作を発表した。結局遠山に咎めはなく、今まで通りサターン町奉行職を続けることとなった。無頼庵と親しい者の証言では、「毒をくらわば皿までも」と言っていたとのことである。

(注)この作品はフィクションであり。登場する個人・団体名は、実在のものとは何ら関係ありません。