サターンの金さん 第14回



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投稿者: 遠山金三郎 @ tproxy.tky.threewebnet.or.jp on 97/7/27 23:29:47

第14回 
サターン町奉行所にて
同心・橋本(以下橋)「脇坂様、GESAとかいう団体の会長で景衛門とか名乗る者が、御奉行にお目通りをと申しておりますが、如何いたしましょう。」
与力・脇坂(以下脇)「何じゃ、そのGESAとかいうやつは?御奉行は、もう帰られておる。」
橋「では、お断りいたしましょう。」
脇「...、いや待て。私が話を聞こうではないか。」
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脇「御奉行は、とある事情にておられぬ。よって留守を預かるこの脇坂が代わりに話を聞いて遣わす。景衛門とか申したな、苦しゅうない、面をあげぃ。」
景衛門(以下景)「これは脇坂様、お忙しいところ、誠にありがとうございます。」
脇「今の私は御奉行の代理じゃ。私の言葉は、御奉行の言葉として受け止めよ。」
景「はは!」
脇「して、今日は一体何の陳情じゃ。」
景「実はでございます。最近何かと凶悪な犯罪しかも子供の犯罪が増えておりますのは、ご存知のことと思いますが。」
脇「うむ、実に嘆かわしいことじゃ。」
景「特に子供の犯罪でございますが、何とテレビゲーム上の暴力や犯罪が誘因とか言う学者が増えておりまして、何かと世間が騒がしいのでございます。」
脇「全く今の学者どもときたら、テレビゲームのことなぞ何ひとつわかっておらぬというのに、誠に腹立たしい!しかも、それをあたかも定説のように流すマスコミも同罪じゃ!」
景「お怒り、ごもっともと存じます。しかし、しかしでございましよ、この説を真に受ける親がいて子供にテレビゲームを禁止したとしたら...。」
脇「それはまずいのう。」
景「で、ございましょう!しかるに、私どもは事なきを得るため防衛手段を講じなければならないのでございましよ。」
脇「防衛手段とな?」
景「左様でございまし。テレビゲームにおける過激表現すなわち殺人、傷害、暴力等の犯罪や性的感情を刺激する表現を全て禁止するのでございます。」
脇「なるほど!テレビゲームは健全じゃということをアピールするわけじゃな。」
景「さすがは脇坂様。物わかりが早いでございます。」
脇「お世辞はいい。して、具体的にどのように行動するのじゃ」
景「それでございます。過激な表現をしたメーカーには、発禁処分を奉行所にお願いしたいのでございます。」
脇「そうかわかった。安心せよ。きっと御奉行も賛同なされること相違ない!」
景「はは、ありがたき幸せにございま...」
サターン町奉行・遠山金三郎(以下)「いや、遅れてすまなんだ!」
脇「こ、これは御奉行、もう帰宅あそばされたはずでは、」
「実はな、ちょっと所用で、でかけておったのじゃ。これ景衛門とか申したな。テレビゲームとは、一体なんであろうか?」
景「はっつ?」
「ゲームというのはのう、疑似体験じゃ。」
景「疑似体験?」
「そうじゃ、現実の世界ではないが、現実っぽい世界を楽しめるものじゃ。」
景「お、おっしゃる通りではございますが...。」
「平凡な人間でも、戦闘機のエースパイロットや無敵の格闘家にもなれる。また、ホラー体験も恋愛体験も可能じゃ。しかし、...疑似体験ではあるが、あくまでリアルさが必要じゃ。ストーリー展開によっては、人を殴らねばならぬこともあろう、女の裸を描かねばならぬこともあろう。逆にそれらを全て規制してしまっては、不自然ではあるまいか。」
景「...」
「お主の言うこともわからぬではない。しかし、自ら将来の道を閉じるような規制をかけてしまって何とする!!!」
景「し、しかしでございます。テレビゲーム上の過激表現が、犯罪を誘発しているというのも、全く関係のないデマではござりませぬ。」
「確かに、子供を長い間部屋に閉じこめ、過激ゲームばかりやらせたとしたら、現実とゲームの世界とを混同するかもしれん。そしてまた、あまり子に構うことなく、そのような状態に置いておく親も多い。しかし、それはゲームの内容が悪いのではあるまい。」
景「...」
「子をそのようにして育てる親が悪いはずじゃ。いや親だけではなく学校にも非はあろう。そのような因果を省みることなく、自らの首を絞めるとは、お主それでも会長の□があるのか!!!」
景「...、わ、私が間違っておりました。こ、これからは真のゲームの楽しみ方につき、世間の誤解を解くことに務めまする。」
「わかれば、今回のお咎めはなしとしよう。それからのう、お主はまだ大きな勘違いをしておる。何だか判るか!」
景「大きな勘違いでございますか?...、...、申し訳ございません。未熟な私にはわかりません。」
「今のテレビゲームは子供のものだけではないぞ。儂のような大人も楽しんでおることを忘れて貰っては困る。」
景「へへぇ、こ、これは恐れ入りました。」
脇「さ、さすがは御奉行、拙者の及ぶところではございませぬ。」
「これにて一件落着!」


ゲーマーの金(以下ゲ)「てな事が奉行所であったようだぜ。」
徳さん「さすがは遠山様だ。ちゃんとわしら庶民の事を考えていてくださる。」
「どうしたい源さん。浮かねえ顔してるじゃねえか。」
源さん「いいけどよぉ。折角週に一度の"金さん"なんだから、やるべきことがあったんじゃねえのか。」
「っていうと?」
源さん「ほら例えば、チャンバラやって入れ墨みせるとか、"裁きを申し渡す、打ち首獄門に処す"とかって決めゼリフがねえと物足りねえじゃねえか。」
作者「だって過激表現禁止だって言うからさあ...。」
「お後がよろしいようで。」

(注)この作品はフィクションであり。登場する個人・団体名は、実在のものとは何ら関係ありません。